原子力保険とは?
原子力保険とは、原子力施設の運転に伴う事故(原子力事故)が発生した場合に、その事故によって生じる損害賠償責任を補償するための損害保険です。一般的な火災保険や賠償責任保険ではカバーしきれない、原子力事故特有の巨大なリスクに対応するために設けられた、極めて特殊な保険制度と言えます。
原子力損害賠償制度と原子力保険
日本の「原子力損害の賠償に関する法律」(原子力損害賠償法)は、原子力事業者に原子力事故が発生した場合の損害賠償責任を負わせる「無過失責任主義」を採用しています。これは、原子力事業者に過失がなくても、原子力事故によって損害が生じた場合には賠償責任を負うというものです。
この法律に基づき、原子力事業者は、原子力事故による損害賠償に備えるため、以下のいずれかの措置を講じることが義務付けられています。
- 原子力損害賠償責任保険契約の締結:損害保険会社との間で原子力保険契約を締結します。
- 供託:法務局に一定額の金銭等を供託します。
一般的には、保険会社が引き受ける原子力損害賠償責任保険契約と、政府が引き受ける原子力損害賠償補償契約を組み合わせることで、賠償義務額全体をカバーする仕組みがとられています。
原子力保険の補償内容
原子力保険は、原子力事故によって生じた以下の損害に対する賠償責任を補償します。
- 人身損害(死亡、負傷など)
- 財物損害(家屋、工場、農作物など)
- その他、原子力事故に起因する損害
補償される損害の範囲は、原子力損害賠償法で定められています。保険金額は、原子力事業者の賠償義務額に合わせて設定され、非常に高額となります。
原子力保険の仕組み
原子力保険は、そのリスクの巨大さから、単一の保険会社では引き受けが困難であるため、複数の損害保険会社が共同で引き受ける「共同保険」の形式がとられることが一般的です。また、政府も再保険や補償契約を通じて、原子力事業者の賠償責任を支援する役割を担っています。
原子力保険は、原子力利用の安全確保と、万が一の事故発生時の被害者救済を両立させるための重要な制度として機能しています。